サイクル劣化試験(Cyclic ageing test)

参考資料 ISO 12944-6&9

海外においては鋼構造物に対する防食塗装システムの標準規格として、国際標準化機構が定めるISO 12944「防食塗装システムによる鋼構造物の腐食防食」が広く活用されている。近年、国内でも洋上風力発電施設等で使用する塗料選定をする際に ISO 12944「防食塗装システムによる鋼構造物の腐食防食」が広く参考にされている。

試験規格

  1. ①SO 12944-6:2018 - Paints and varnishes - Corrosion protection of steel structures by protective paint systems - Part 6: Laboratory performance test methods
  2. ②ISO 12944-9:2018 - Paints and varnishes - Corrosion protection of steel structures by protective paint systems - Part 9: Protective paint systems and laboratory performance test methods for offshore and related structures

試験内容

ISO 12944は塗装システムを適用する分野が明確に区別されており、補修塗装までの期間を示す「塗装システムの期待耐用年数の区分」と鋼構造物が置かれている環境の分類を示す「腐食環境(大気腐食)の分類」が定義されている。腐食環境の分類に対応するサイクル劣化試験の試験条件を示す(表-1参照)。

表-1 腐食環境の分類(抜粋)に対応するサイクル劣化試験の試験条件
腐食環境の分類 期待耐用年数区分 期待耐用年数 サイクル劣化試験
C4(高い腐食性) VH(極めて高いレベル) 25年以上 1680時間
C5(非常に高い腐食性) H(高いレベル) 15~20年 1680時間
VH(極めて高いレベル) 25年以上 2688時間
CX(極めて高い腐食性) H(高いレベル) 15~20年 4200時間

〈スクライブラインの付け方〉

ISO 12944のスクライブラインは、JIS K 5600-7-9の切り込みきずと比較してカット幅が広く、“エンドミル”を用いて幅2±0.2mmにカットする(図-1参照)。

試験条件

ISO 12944-6及び-9のサイクル劣化試験(Cyclic ageing test)のサイクル条件を示す(図-1参照)。

図-1 ISO 12944-9のサイクル条件

評価方法

評価部位 評価方法 要求事項
一般部 ISO 4628-2, 膨れ 0(S0)
ISO 4628-3, さび Ri0
ISO 4628-4, 割れ 0(S0)
ISO 4628-5, 剥がれ 0 (S0)
ISO 2409, Cross-cut 分類0 ~ 2
ISO 4624, Method A or B, Pull-off ISO 12944-6
いずれの試験体も2.5 MPa以上
付着強さが5.0 MPa未満の場合は、鋼材又はmetalized steelと1層目との間での接着破壊が0%であること
ISO 12944-9
試験前の付着強さに対して、いずれの試験体も50%以上の付着強さであること
付着強さが5.0 MPa未満の場合は、鋼材又はmetalized steelと1層目との間での接着破壊が0%であること
スクライブ部 サイクル劣化試験後の
スクライブ部の腐食
平均値でスクライブ部の腐食幅 3.0 mm以内

スクライブ部の腐食幅測定(例)

適切な方法で付着していない塗膜を除去した後、スクライブラインの中点と中点の両側から5mmずつ離れた4点の計9点(図-3参照)における鋼材の腐食幅を測定する。式(1)によりスクライブ部の腐食幅を求める。

M=((C-W))/2 式1
図-3 スクライブ部の腐食幅